半夏厚朴湯の誤嚥性肺炎予防へのエビデンス
市中病院に勤務する内科医は、高齢者の誤嚥性肺炎診療に飽きてきたのでは無いでしょうか?今回は、誤嚥性肺炎の予防効果があるといわれる半夏厚朴湯のエビデンスを紹介します。
参考文献は J Am Geriatr Soc 55:2035-2040,2007.
日本からの報告です。
P:2005年3月~2006年2月の間、日本の2つの長期療養型病院の認知症、脳血管障害、アルツハイマー病、パーキンソン病を有する高齢者114名(平均年齢 83.5±7.8)
I :半夏厚朴湯
C:プラセボ
O:肺炎の発生率、肺炎による死亡率、1日の自力摂取量
<結果>
半夏厚朴湯群で4名が肺炎を発症し1名が死亡、対照群では14名が肺炎を発症し、6名が死亡。両群間では、肺炎の発症に有意差があり(P=0.008)、肺炎関連死亡率にも有意差がある傾向(P=0.05)。対照群と比較した半夏厚朴湯群の肺炎の相対リスクは0.51(95%CI=0.27-0.84、P=0.008)、肺炎による死亡の相対リスクは0.41(95%CI=0.10-1.03、P=0.06)。特に、半夏厚朴湯群で有害事象は認めなかった。
以上の結果から半夏厚朴湯は認知症高齢者の肺炎や肺炎関連死亡のリスクを減少させると結論付けられています。
患者数も少ない研究で、全ての高齢者の肺炎に投与するのは、やりすぎかと思いますが、認知症や脳血管障害のある誤嚥性肺炎症例で半夏厚朴湯の追加は試してみる価値がありそうです。
甲状腺機能と造影剤
造影CTの問診票に「甲状腺の病気はありますか?」という項目をみたことのある方もいらっしゃると思います。どうしてこのような問診があるのでしょうか。解説します。
甲状腺とは
甲状腺は前頸部に存在する臓器です。
下垂体から分泌されたTSH(甲状腺刺激ホルモン)の刺激を受けて、甲状腺ホルモン(FT3、FT4)を分泌します。この甲状腺ホルモンを産出する材料の1つにヨードがあり、このヨードを含む造影剤を使用すると、甲状腺の病気のある方で問題となることがあります。
ここでは、甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症に絞って解説します。
甲状腺機能亢進症の場合
甲状腺機能亢進症にヨードを投与すると、ホルモンの材料が増えたことで、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されます。重篤な場合、甲状腺クリーゼを生じます。
甲状腺機能亢進症の方にヨード造影剤を使用する際は、十分な注意が必要です。
甲状腺機能低下症の場合
甲状腺機能低下症の場合も注意が必要です。
それは、ヨードが甲状腺の機能を抑制し、甲状腺ホルモン値が低下するからです。
ヨードを過剰に摂取すると甲状腺ホルモンの分泌が低下することをWolff-Chaikoff効果と言います。
甲状腺機能低下症の方にヨード造影剤を使用する際も、病気が落ち着いていることを確認しておく必要があります。
「甲」がゲシュタルト崩壊しました。
初めてのブログ。少しずつ慣れていきます。